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現物給与として課税されない税法の活用

1. 所得税法の取扱い

現物給与については、換金性に難点があり、福利厚生の面もあるため、一定のものについては、課税対象外とする税務上の取扱いがあります。

≪主として、少額不追及の趣旨で課税除外しているもの≫
  1. 社会通念上相当と認められる永年勤続者の記念品や創業記念
  2. 役員、従業員に対する一定の条件に該当する自己の商品や製品等の値引販売
  3. 従業員が負担する各種レクリエーション費用
  4. 役員、従業員に対する金銭の無利息又は低利の貸付けによる利益で、その貸付けが災害、疾病等に基因するもの及びその利益が少額のもの
  5. 会社が負担する少額の社会保険料又は生命保険、損害保険の少額の保険料等
  6. 会社が役員・従業員に対して支給する食事の費用で、少額のもの(受給者が食事代の半額以上を負担する場合に限る)
役員や従業員に支給する食事は、次の2つの要件をどちらも満たしていれば、給与として課税されません
  1. 役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること。
  2. 次の金額が1か月当たり3,500円以下であること。
    (食事の価額)-(役員や従業員が負担している金額)
<例>・仕出し弁当などを取り寄せて支給している場合には、業者に支払う金額
社員食堂で会社が作った食事を支給している場合には、食事の材料費や調味料など食事を作るために直接かかった費用の合計額

自社の調理により食事を支給し、従業員から食事代250円をもらっています。
なお、直接かかった費用は、1食当たり250円です。

 

<自社調理の場合の直接かかった費用の合計額>
支給時の価額(時価)になります。自社調理の場合も
  1. その食事の材料等に要する直接費
  2. 調理に従事する従業員の給料相当額
  3. 光熱費や設備等の減価償却費等
を含めて原価計算により評価するべきですが、過重な負担となるため、aの直接費の額にて評価することになっています。

2. 社会保険(健康保険法・厚生年金法)の取扱い

<現物給与の取扱い>
通勤定期券、食事(給食・食券など)、住宅(社宅・寮など)、その他被服や自社製品などを現物で支給する場合も、それが労働の対償として支払われるものである限り、報酬とされます。
ただし、被服のうち、勤務服としての制服や作業衣は、業務に使用する用具の性質を持つもので、労働の対償とはされず、報酬には含まれません。
また、食事や住宅などの現物については、地方社会保険事務局長が標準価額を定め、この標準価額に基づき金銭に換算することになります。

<健康保険法の現物給与の価額>
報酬又は賞与の全部又は一部が、通貨以外のもので支払われる場合においては、その価額はその地方の時価によって厚生労働大臣が定める。
厚生年金保険法の現物給与の価額報酬又は賞与の全部又は一部が、通貨以外のもので支払われる場合においては、その価額はその地方の時価によつて社会保険庁長官が定める。

東京社会保険事務局長の定める標準価額
 
朝 食
昼 食
夕 食
食事の給与
170円
230円
260円
*1人1日:660円

<食事の給与の取扱い>
従業員に社員食堂などで食事を支給した場合で、その一部を従業員が負担している場合は、標準価額から負担分を差し引いた額を算入します。
ただし、標準価額の2/3以上を負担している場合は、現物給与はないものとして取り扱います。

自社の調理により食事を支給し、従業員から食事代250円をもらっています。
なお、直接かかった費用は、1食当たり250円です。

<結論>
社会保険の標準価額230円の2/3(154円)を従業員から徴収することで、所得税法の1/2(125円)もクリアできます。